昼過ぎ、お義父さんの部屋からボウズの泣き声が聞こえてきた。何かと思っていたら、泣きながら階段をあがってくる。
部屋に来るなり、「もうなおらないって~」と言って床に伏せて泣いている。
一緒にお義父さんの部屋に行って話を聞いてみると、ブラインドの紐をボウズがはさみで切ったらしい。
じぃちゃん、あとでなおしてくださいと、壊れたおもちゃの修繕を頼むかのごとく言ったボウズに、お義父さんが、もう直らないと言ったので泣いたようだ。
ボウズにしてみれば、いつもおもちゃをなおしてくれるお義父さんが、ブラインドも直してくれるに違いないと思っていたのでショックだったようだ。
はさみで切ったら元の形には戻らないのだと言い聞かせると、なんとなく判ったのか神妙にうなずいている。これで、「戻らないものもある」ということを覚えてくれるといいのだが。
……世の中、壊れるともう戻らないものの方が多いのだが……。