ひかるのおにわ

御剣ひかるの日常と、子供達のこと

NW小説「望まれた破滅」

望まれた破滅 9

大人の、ストリートキッズ達に対する冷ややかな態度は、今までの経験からも判っていたはずなのに。でも、実力をつければ誰にもさげすまれずに胸を張って生きてゆける。 わたしは勉強に勉強を重ねて、ついには、科学雑誌に載っていた論文の矛盾点を見つけ、そ…

望まれた破滅 8

孤児院の爆破事件から、6年が経った。わたし達は、相変わらず路地裏でその日暮らしの生活をしている。 わたしは、相変わらず図書館にこっそりと出入りして勉強を続けている。ゴミとして出されている雑誌も読んでいた。 特に力を入れている分野は科学。まだ…

望まれた破滅 7

図書館で真実を知ってから、大人に頼ることをあきらめた。 安定した生活力を得るすべを手に入れるしかない。しかし今のわたし達を雇い入れてくれるところはない。 そこでわたしは勉強を始めた。時間があれば図書館に通い、片っ端から本を読み漁った。昔から…

望まれた破滅 6

わたしは、あの事件のことが知りたくて、2年前の新聞を読んだ。 「ロス郊外の孤児院 夜明けに炎上」 孤児院からの出火を初めて扱った記事は、孤児院からの失火かガス管の破裂か? と、事故として報じていた。 50人近くいた子供達はほとんどが焼け死に、警…

「望まれた破滅」 5

路地裏の、さらに奥まったところにある瓦礫の陰でひっそりと暮らすわたし達。 元はビルであったろうそこは屋根もほとんどなく、大型ゴミを集めてきてどうにか屋根の形にしていた。大雨が降れば十分にしのぐことは出来なかったが、唯一わたし達の存在を認めて…

「望まれた破滅」 4

まだそのあたりにいる子供達に声をかけて回る。 「大人について行っちゃダメ! 殺されちゃう!!」 わたしの必死の呼びかけに応じる、わたしよりも小さな子供達。 「どうして、おとなについていったらころされるの?」 「だって、見たんだもん。銃で撃たれてた…

「望まれた破滅」 3

孤児院だった巨大な炎の塊から発せられる強烈な熱気。それに押されるようにわたしは逃げた。体はやっぱり痛かったけれど、それよりも「生きたい」と願う心の方が強かったのだ。 郊外に建てられていた孤児院から、街に向かってまろびながらも走り続けた。 石…

「望まれた破滅」 2

わたしを建物へと導いてくれた女性は、わたしの話をしっかりと聞いてくれた。 言葉ははっきりとしゃべれても、まだ要点を掴んで話すということを知らなかったわたしの、無駄に長い話を聞き、相槌をうち、時々悲しさと愛しさの混ざった表情を浮かべて頭をなで…

「望まれた破滅」 1

あのころは、まだ信じていた。待ち続ければ幸せが訪れると。 新しい親が決まるまで住む「家」があるころは。 「ママ」達は優しく、時に厳しくわたしたちを育て、「兄弟たち」とは仲良く、時にはけんかもして、楽しく過ごしていた。 遠慮もなく地上に降り注ぐ…