まだそのあたりにいる子供達に声をかけて回る。
「大人について行っちゃダメ! 殺されちゃう!!」
わたしの必死の呼びかけに応じる、わたしよりも小さな子供達。
「どうして、おとなについていったらころされるの?」
「だって、見たんだもん。銃で撃たれてたのを」
あの恐ろしい光景がフラッシュバックして、わたしは自分を抱きしめるように抱え込んで震えた。
「ミリー! 無事だったんだね。……どうしたんだ?」
声をかけてくれたのは、普段から仲良くしていたウィリスという子。わたしよりも1つ年上で、5歳の男の子だ。
「大人達についていったらダメ! 殺されるの!」
錯乱状態にも似たわたしは、しどろもどろになりながらウィリスに状況を説明して、他の子供達を集めるようにお願いした。
彼は快く引き受けてくれた。わたしと子供達を路地裏まで連れて行ってそこに隠れているように言うと、他の子供達を捜して再び大通りへと戻っていった。
呼びかけに応じて近くの路地裏に集まったのは18人くらい。上は小学校高学年くらいから、下は2歳くらいの子まで。もちろん、小さな子は年長者が抱えて連れてきたんだけど。
そこで改めて自分が目にした光景を説明した。
「大人達が、『こっちにおいで』って誘って、ついて行った子供達を銃で撃ち殺してたの!」
「でも、救急車とか来てるだろ? 救急車に乗れば大丈夫だよ」
「ダメよ! だって……、だって、孤児院を爆発させたのは、その大人達なんだもん。その人達、孤児院にいた子供達を全員殺すつもりなのよ! 病院に行ったって、捕まって殺されるわ!」
「だったら、どうするんだよ」
「みんなで力を合わせて、一緒に暮らそうよ。孤児院はなくなっちゃったけど、みんな一緒に協力して……」
わたしの案に、お兄ちゃんお姉ちゃん達はかぶりをふった。
「無理だよ。子供達だけで暮らせるほど『外』は甘いところじゃないって『ママ』達は言ってた。だから孤児院があるのよって。子供は、大人達が守るものなんだって」
そうなのかもしれない。でもお兄ちゃん達は子供が殺されてしまったところを見ていないからそういえるんだって思った。
結局、大人に助けを求めに行く子と、わたしの案を受け入れる子とに別れた。
残ったのは10人。
一番の年長者はウィリス。次にわたしと数人。そして、1歳下の子達。
結局、小学生以上のお兄さん達はみんな大人の助けを求めに行った。その際、まだ自分の意思で行動できないような小さな子達も連れて行かれた。
彼らが希望通り大人に助けられたのか、それとも殺されてしまったのかは、知るすべはない。
わたし達は路地裏にひっそりと身を潜め、ゴミとして出された残飯をあさって食べることで、日々生きながらえるという生活を始めたのだから。