ひかるのおにわ

御剣ひかるの日常と、子供達のこと

目を離した隙に

 ムスメがひとりで外に出て行った。

 わたしは、しばらく気がつかなくて、ふとムスメの気配が家の中にないので庭を探した。
 いつもは砂場で遊んでいるムスメの姿が見えない。
 裏庭にもいない。
 家の中かと思って探したが見つからず、お気に入りの靴がない。
 ちゃんと靴を履けるようになったムスメに喜んでいたのだが、今度ばかりはそうは言ってられない。
 明らかに、門の外に出たのだ。門はきっちりと閉まっているから、律儀に閉めていったのだろう。

 近くの月極め駐車場にもいない、付近にもいない。
 念のためもう一度家と庭を見たがいない。
 その時、ふとムスメの声が裏の方から聞こえた。しかし、裏庭よりは遠い。
 そっちは、いつも遊びに行く公園の方向だ。

 もしかして一人で公園にいくつもりでそちらにむかったのか、と思って走っていったら、いた。
 自転車に子供を乗せた女の人に、手を繋がれて。
 近くには踏切と、その先に公園がある。
 やはり公園に行くと言っていたそうだ。
 その人と、通報に近くの交番まで行ってくれた人がいた。
 やがてパトカーがやってきて、警官に名前や住所を聞かれた。

 ちょっと目を離した隙に……。去年のボウズの時と同じだ。反省したはずだったのに、またやってしまった。
 散らかし放題のムスメを軽く叱ったらムスメはわたしのそばを離れて行った。ひとりで遊んでいるからと安心していたら、いつの間にかいなくなった。家の戸や門の音にも気付かなかった。
 家の近所は車が多い。さらに踏切の方に歩いていっていたなんて、家の近くで車や電車にはねられていたかもしれないと思うと、ムスメに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 去年のボウズはまだ車のことも踏切のこともちゃんと判っている歳だったが、ムスメはそうじゃない。遮断機をくぐって警報の鳴る踏切内に入って行ってもなんら不思議はないのだ。

 完全にわたしのミスだ。きちんと門の上の針金を止めておくべきだった。なにより、一人で遊んでいるからと目を離すのではなかった。
 ごめんねムスメ。